6/27付の朝日新聞で、作家 高橋源一郎さんが、「映画の『立候補』を見て涙が止まらない。こんなの何年ぶりだろう」
と書いていました。気になって見に行きました。
いわゆる「泡沫(ほうまつ)候補」の姿をキワキワに描くドキュメンタリーですが、ドラマかとおもう構成力と、制作意図を押しつけないフェアさのある編集。すごくセンスが良かった。
私の席の近くに「なんか見覚えのある…」と思ったら評論家のOさんがいて、終わったあと一人で拍手してらした。
ものかきって「フェア」に弱いようです。
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泡沫候補のひとりマック赤坂は、映画のハイライトで、総選挙投票前夜に、安倍晋三の登場を待つ群衆の前に現れ、「帰れ」「死ね」「ゴミ」コールを浴びながら、喋り続けます。
あの日、偶然あそこを通りかかった自分も、大量の日本国旗と「安倍さまコール」にびっくりしました。そして思いました。
「大多数派でいたら、ラクだ」
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源一郎さんは書きます。
「(マック赤坂)の姿を見ながら、ぼくは気づいた。あそこで「ゴミ!」と罵倒されているのは、ぼくたち自身ではなかったろうか。ぼくたちは、この世界は変わるべきだと考える。だが、自らが選挙に出ようとは思わない。それは誰か他の人がやることだ、と思っているからだ。いや、もしどんな組織にも属さないぼくたちが選挙に出たら「泡沫」と呼ばれ、バカにされることを知っているからだ。そんなぼくたちの代わりに彼らは選挙に出る。そして侮蔑され、無視され、罵倒される」
マック赤坂氏は京都大学を出て、25年間 伊藤忠に勤務した後、貿易会社を興して財をなしたとか。政治経済については、むしろ他のメジャー候補者よりも造詣がふかく、今の日本がどうすべきか方法論も持っているはず。
しかし、その武器をほとんど使わず「ポジティブ!」「スマイル!」音頭を連発し、奇妙な恰好で踊り狂う。
「そのスタイルの真意はわかりません」と会社を継いだ息子も言います。
でもね、自分を罵倒し安倍様に旗をふりまくる群衆を 見下ろすマック赤坂に、私は興奮しました。おっさんすげえロックじゃん・・・・。
今さら気づいたけど、目立ちたいだけでこんな精神的地獄を何度も味わえるか、本気中の本気です、
負ける戦いとわかっていても、挑み続けることでナンカに勝てる瞬間がある、そういう次元の高い快感って、やめられないんだ。ジャンキーですね。
そういうことを続けていると、自分にツバを浴びせる人々ですら、時にはかわいく、かわいそうなのではないか。群衆を見るマック赤坂の目は、やわらかく見えました。
名物 外山恒一演説もぜひ
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負け続けるおじさんたち
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